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広島高等裁判所 平成4年(行コ)4号 判決

控訴人

河原寅次

右訴訟代理人弁護士

高村是懿

被控訴人

広島市

右代表者市長

平岡敬

右訴訟代理人弁護士

宗政美三

右指定代理人

山崎剛

外五名

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が控訴人に対し昭和六〇年一月二五日付でした、原判決添付別紙処分目録一の「従前の土地」欄記載の土地に対する換地として、同「換地」欄記載の土地を指定した処分及び同目録二の「従前の土地」欄記載の土地に対する換地として、同「換地」欄記載の土地を指定した処分を、それぞれ取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二  当事者の主張

次のとおり、付加、訂正する外は、原判決事実摘示(原判決二枚目表一〇行目から同一二枚目表九行目まで)と同一であるから、これを引用する。

(原判決の訂正)

原判決二枚目裏五行目の「法内○番という。」を「法内○番、または単に地番のみで表示する。」と改める。

同七枚目表一行目の「原告の所有地」を「控訴人の従前地」と改める。

(控訴人の補充主張)

一  本件第一処分について

原判決は、本件第一処分が土地区画整理法(以下、同法を単に「法」ともいう。)八九条一項に定める照応の原則に反しないと判示したが、次の理由から不当である。

1 控訴人の換地の基準指数の増加について

原判決は、控訴人の従前地七筆の合計基準指数が九六二五三三であるのに対して換地の合計基準指数は一一二九八二一であるとして一七パーセント増と認定しているが、右換地の合計基準指数は九六八六五六が正しく(本件第一処分は、一六四五番二、一六四六番一、一六四七番この従前地が四四番三に換地され、一六四九番一の従前地が四四番二一に換地されたにもかかわらず、甲第一五号証の四の換地確定計算書では、右四筆の従前地が右二筆の換地と組み合わされて基準指数が二重に加算されている。)、評価額の増割合は0.6パーセントに止まる。

また、照応の原則は、従前地とそれに対応する換地との関係において個別に検討されるべきところ、原判決は、何らの合理的理由もなく、本来対応関係にない従前地七筆と換地四筆の全体について照応を論じている点において不当である。

2 土地の評価方法について

原判決は、土地の評価方法について、換地設計基準一五条、一六条、土地評価基準三条を根拠に、地積式の考えを基にしているから整理後の路線価があれば十分であって整理前の路線価は必要としないと判示している。しかし、照応の原則からすれば、地積式評価方法は価値の較差の少ない土地を対象とする土地区画整理などに限定して用いられるべきであり、土地の価格が地目、位置、利用状況によって大きく差のある場合は、整理前の土地価格と整理後の土地価格を算出して両者の等価交換をより正確にする評価比例式換地設計の方式が用いられるべきである。

本件第一処分では、対象となった本件施行地区には宅地と田が混在しており、各筆ごとに土地の単価に大きな較差があることからすれば、整理前の地目の違いによる土地価格差を考慮しない地積式を基にした土地評価を用いたことは誤りである。本件区画整理の換地設計基準一五条でも、従前の宅地の基準指数を換地の基準路線価で割ることによって換地地積を算出しようとしており、同一六条の「原位置における基準路線価」とは「原位置における整理前の基準路線価」と解釈すべきである。原判決は、これを「原位置における整理後の基準路線価」と解しているが、それでは、整理後の路線価をもって整理前の土地の評価をすることになり、法八九条一項の照応の原則に反し、ひいては憲法二九条三項に違反するというべきである。この点について、原判決は、整理前の路線価が必要となるのは法一〇九条一項の減価補償金を支払う場合であると判示しているが、減価補償金を支払う必要が生じて初めて整理前の路線価が必要となる訳ではない。

3 出宮に対する換地との不公平について

(1) 控訴人に対する換地と出宮に対する換地を比較した場合、従前地の地目を考慮すると、宅地の価格は田の価格の少なくとも一〇倍であるから、これを換地指数に反映すべきところ、控訴人の従前地は地目宅地か地目田でも現況はいずれも宅地であるのに、出宮の従前地は地目田で現況は雑種地であって田と同様であり、全体としてみると、控訴人の換地指数はほぼ等しくなるのに対して、出宮の場合は照応の原則を大きく逸脱して有利な換地処分を受けている。

また、両者に対する換地を指数化しないでみても、出宮の場合は田から宅地への換地であるのに面積が1.65倍となっており、一方、控訴人の場合は主として宅地から宅地への換地であるのに面積が全体として減少している。

この点、原判決は、右両者に対する換地は全体として照応していると判示するが、平等原則からして相互に関連する控訴人の従前地七筆と出宮の従前地一六九番四の土地とを比較すべきであり、その場合、前者は実測面積合計1467.12平方メートル(うち宅地及び現況宅地が69.2パーセント)が1277.41平方メートルの宅地に換地されたのに対し、後者は田から宅地への換地であるのに面積は1.65倍になっており、明白な不公平が存在する。

(2) さらに、控訴人に対する換地と出宮に対する換地を比較した場合、換地の位置、形状においても大きな較差があり、原位置換地を原則とする換地設計基準七条の規定、ひいては照応の原則に明らかに反している。

控訴人の七筆の従前地は、主として母屋及びアパートの敷地として利用されていたもので、本件区画整理による県道三七号線の拡幅によって東南の角が僅かに切り取られることになった。そこで、控訴人は、母屋の一角を取り壊す工事まで行って、被控訴人に対し、原位置換地がなされるべく申し入れたが、容れられなかった。一方、出宮の従前地の一六九番四の土地は、県道三七号線に呑み込まれ、原位置換地が困難となったものであるから、換地設計基準七条但書により飛換地がなされるべきであったのに、ほぼ原位置に換地がなされている。

また、土地の形状についても、控訴人の七筆の従前地は、県道二二〇号線と川沿いの道路の二辺に囲まれたほぼ正方形の角地であったのに、L字型の角地でない土地に換地され、土地利用に地形上の制約を受けることになった。一方、出宮の前記従前地は、偏形四辺形という利用しにくい形状の土地であり、角地でもなかったのに、ほぼ正方形の二辺を道路で囲まれた角地として換地され、いずれの道路からも出入りが可能となるなど有利な換地となっている。

(3) なお、出宮は可部税務署の固定資産税課に勤務していた者で、本件土地区画整理の評価委員をしており、いわば、本件土地区画整理に関する土地評価については、同人の独壇場ともいうべき状況にあったものであって、そのため、右のように不公平な換地が行われたものである。

二  本件第二処分について

原判決は、本件第二処分についても、照応の原則に反しないと判示したが、次の理由から不当である。

1 平均減歩率との較差について

山地部の土地は、土地の位置、形状による価格差が少なく、特段の事情がない限り、換地による減歩率は同一でなければならないところ、控訴人の換地の減歩率76.2パーセントと平均減歩率六五パーセントとの間には11.2パーセントもの較差があり、原判決は、この点について、合理的理由を示すことなく不利益処分ではない旨判示している。

2 基準地積の算定について

原判決は、控訴人の九筆の従前地の基準地積を12802.94平方メートルと認定しているが、四九四番二の土地については水道局に売却されなかったのに「削除分」に含めて地積算定がなされている。そのうえ、右土地については、昭和四九年八月三〇日付測量図(甲第三四号証の一、二など)と昭和五〇年三月二七日付測量図(甲第二四号証)の二つの異なった測量図が作成されており、分筆登記に用いられた前者の方が正確な図面というべきであるのに、原判決は広島市水道局が隣地所有者の立ち会いの下に測量したという理由だけで後者の地積が正しいとしている。

(右主張に対する被控訴人の反論)

一  本件第一処分について

1 換地確定計算書について

甲第一五号証の四の換地確定計算書にかかる一六四五番二、一六四六番一、一六四七番二及び一六四九番一の四筆の土地については、当初、四四番三及び四四番二一の土地を合わせた一区画の土地への換地する予定で仮換地指定をしていたが、右四筆の従前地のうち一六四九番一の土地については登記名義人である河原三八(控訴人の被相続人)の住所が他の三筆と異なっていたため、止むを得ず他の三筆と分離し、二区画に分けて換地処分したものである。右の経緯の中で、二つの異なる換地計算書(甲第一五号証の四と甲第六一号証)が作成されたもので、控訴人の主張は言いがかりにすぎない。

2 土地の評価について

土地区画整理においては、当該従前地そのものの持つ価値(土地の形状、地積、傾斜の有無等)に着目して換地設計を行えば十分であり、法八九条一項が「換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように」と規定していることからしても、地目の違いによる価格差を考慮すべきであるという控訴人の主張は失当である。本件換地計算方法は土地区画整理審議会に諮問し同意を得たうえで採用されたもので手続的にも何らの違法はない。

被控訴人は、本件事業の換地設計の際に行われる土地評価において地積式を基本に採用したものであり、従前地そのものの評価は地積を基準に行っているから路線価による評価は必要ない。なお、地積式を基本として換地計算を行うと、土地区画整理事業の進捗を早めることができ、地元住民の要請にも沿うところであった。この点、控訴人は、土地区画整理前の路線価が必要であると主張するが、換地設計の際における土地評価の問題と、保留地または減価補償金算定の際に必要となる施行前の土地評価の問題とを混同しており、失当である。

3 出宮に対する換地との不公平について

(1) 控訴人は、出宮の従前地の地目が田であることを強調して照応原則違反をいうが、前述のとおり、土地区画整理において従前地の地目は考慮する必要がなく、仮に、何らかの考慮をする余地があるとしても、本件事業開始時における出宮の従前地(一六九番四の土地)の現況は田ではなく、控訴人の従前地と差異がなかったものである。

また、控訴人は、控訴人の従前地七筆と出宮の従前地一六九番四の土地とを比較して照応原則違反を主張するが、本件第一処分においては、位置の照応を図るため拡幅前の県道三七号線に面する従前地に対しては拡幅後の県道三七号線に面する土地を換地として指定することを原則とし、その際、個別的照応が困難な場合は総合的に照応を図るという方法で換地設計を行ったものであり、控訴人の従前地七筆と出宮の従前地一六九番四のみを捉えて比較検討している控訴人の主張は失当である。

(2) 控訴人は、換地設計基準七条の規定により控訴人の従前地については原位置換地すべきであり、出宮の従前地は飛換地すべきであった旨主張するが、法八九条一項にいう位置の照応については地理的な位置のみではなく、土地区画整理によって確保された道路等公共施設との位置関係も考慮されなければならず、公共施設に含まれる従前地は飛換地すべきであるという控訴人の主張こそ、権利者間の不平等な取り扱いを招来するもので違法というべきである。また、控訴人は、控訴人の従前地が母屋等の敷地として利用されていたことを強調するが、土地区画整理においては、かかる主観的価値は考慮すべき合理的理由には該当しないというべきである。

また、土地の形状の変化についても、控訴人の七筆の従前地は角地ではなく、逆に控訴人に換地された四四番一の土地は角地になっており、L字型の土地に換地されたという主張についても、もともと控訴人の従前地は三つの土地に区分して利用せざるを得ない地形だったことを考慮すれば問題とするには足りない。一方、出宮の従前地は、角地として評価されてよいものであり、偏形四辺形の従前地がほぼ正方形といえる土地に換地された点も、土地区画整理事業の目的からして当然のことである。なお、右の点は、本件換地計算において路線価の不正形修正が行われたことにより考慮がなされている。

(3) 控訴人は、出宮が本件土地区画整理の評価委員をしていたことから不公平な換地が行われた趣旨の主張をするが、土地評価の最終決定は本件事業の施行者である被控訴人において行っており、評価員には出宮以外に地元の状況に精通した他の四名が選任されているところであって、控訴人の主張は単なる憶測にすぎない。

二  本件第二処分について

1 山地部の従前地の基準指数を算定するには、共通負担地積を控除した後、山地部修正が行われるため、同じ山地部であっても、各権利者の従前地の山林部と耕地部の所有割合によって当然基準指数の総計に多寡が生じるものである。したがって、山地部における換地では平均減歩率と各換地の減歩率が原則的に一致しなければならないとする控訴人の主張は失当である。

2 被控訴人は、広島市水道局の資料により実測面積が判明したものについて、公簿面積により按分して基準地積を求めようとして対象地積から控除したものであって、結果的に四九四番二の土地が水道局に買収されたか否かは関係がない。また、昭和五〇年三月二七日付基準地積通知の際に用いた従前地の実測地積は、広島市水道局が土地買収のために行った実測の結果によるものであり、正確なものである。

第三  証拠

証拠関係については、原審及び当審記録中の各書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、本件第一処分及び本件第二処分はいずれも適法であり、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加、訂正する外は、原判決理由説示(原判決一三枚目表二行目から同二六枚目裏五行目まで)と同一であるから、これを引用する。

原判決一三枚目裏七行目の「第二〇号証」の次に「、第六一号証」を加え、同一四枚目表五、六行目の「証人周藤準」及び同六行目の「同河原清人」の次に、いずれも「(原審及び当審)」を加える。

同一五枚目表一行目の「原告の家屋」の次に「(母屋)」を、同九行目の「県道三七号線」の前に「拡幅前の」を、それぞれ加える。

同一六枚目表七行目の「その結果、」の次に「控訴人に対する換地は、」を加える。

同一七枚目裏七行目の「六三三四四七」を「四七二二八二」と、同七、八行目の「一一二九八二一」を「九六八六五六」と、同一〇行目の「一六七二八八」を「六一二三」と、同一八枚目表一行目の「一七パーセント(167288÷962533)を「0.6パーセント(6123÷962533)と、それぞれ改める。

同一九枚目裏五行目の「一六九番四の土地」の次に「(出宮の従前地)」を加える。

同二〇枚目表一行目から同二一枚目表末行までを、次のとおり改める。

「3  換地設計の方法と従前地の土地評価について

土地区画整理事業において、従前地からいかなる換地を算出するかという換地設計の方法については、法は八九条一項で照応の原則を定めているのみで具体的な定めをしていないが、土地所有者や関係権利者の権利、利害に最も影響を与えることから、施行者は、各事業毎に換地設計基準等の規程を設定してその処理に当たっており、これまで、換地設計の方法としては、換地の地積を従前地の地積に減歩率を乗じて算出するのを基本とする地積式、従前地の価格を評価して整理後の土地の総評価額に比例分配した換地を算出する評価式及び右二つの方式の折衷式の三つの方式が用いられてきている(成立に争いのない乙第二一号証、原審及び当審証人周藤準の証言及び弁論の全趣旨)が、地積式は簡明で手続の迅速化には適するが、従前地と換地の個別的価格差についての配慮を欠く点に難があり、評価式は理論的である反面、個々の土地評価を要する作業の困難性と整理前後の土地評価の適正が問題となるなど、一長一短があって、結局、いずれの方式を採用するかは、施行者の合理的裁量に委ねられているというべきである。

ところで、本件事業の換地設計基準(乙第三号証)によれば、従前地の基準指数は、換地基準地積から共通負担地積を控除した地積に原位置における基準路線価を乗じて求めるのを標準とし(一六条)、換地の地積は、従前地の基準指数を換地先の位置における基準路線価(別に定める土地評価基準により求める。)で除して算出した地積から地先負担地積を控除したものを標準とする(一五条)と定められており、従前地を共通負担率で減歩して原位置に換地するのを原則とする地積式を基本としながら、従前地を原位置に換地したと想定した価格と現実の換地の評価価格とが適合するように修正を加える方式を採用したものと理解できる。

原審及び当審証人周藤準の証言並びに弁論の全趣旨によれば、被控訴人が右方式を採用したのは、本件事業の対象となった区域は大半が農地であって、全体的にみた場合、近い将来の土地利用の予測を含めて地域的地価較差は少なく、地積式を基本とした方が従前地土地所有者や関係権利者の同意が得られ易く、土地区画整理事業の迅速な進捗にも資すると考えたからであり、右換地設計基準については土地区画整理審議会の同意も得ているところであって、施行者に与えられた合理的裁量権の範囲に属するものと認められる。

そして、右のように地積式を基本に換地設計を行う場合、従前地の路線価による個別評価は必要でなく、整理後の路線価を用いて従前地を原位置に換地したと想定した価格を算出し、これと実際に換地した土地の路線価との比を換地計算に取り入れることにより地域的地価較差を是正しようとしたものである。この点、本件事業の土地評価基準(乙第一一号証)では、従前地及び換地の評価は原則として路線価式評価方法による(二条)としているが、一方、路線価は事業計画において定められた道路に付けることを原則とする(三条)とも規定されており、前記換地設計基準で定められた換地計算方法を合わせ考えれば、本件事業において被控訴人が従前地について路線価による個別評価をしなかったことをもって違法とするに足りないというべきである。

なお、右換地設計基準により算定された控訴人の七筆の従前地の基準指数と四筆の換地の基準指数がほぼ適合していることは、前記認定のとおりである。」

同二二枚目表九行目の「それを大幅に上回っている」を「それを若干上回りほぼ適合している」と改め、同末行の次に、改行して次のとおり加える。

「この点について、控訴人は、法八九条一項の照応の原則は、従前地とそれに対応する換地との関係において個別に検討されるべきところ、本来対応関係にない従前地七筆と換地四筆の全体について照応を論じることは不当である旨主張するが、本件第一処分においては、原判決添付別紙処分目録一に記載のとおり、控訴人の従前地一六四五番一と一六四六番二の二筆の土地を四四番一の土地に、従前地一六五〇番の土地を四四番二〇の土地に、従前地一六四五番二、一六四六番一と一六四七番二の三筆の土地を四四番三の土地に、従前地一六四九番一の土地を四四番二一の土地に、それぞれ換地したものであって(当事者間に争いがない。)、数筆の従前地に対して数筆の換地を定めたものではないから権利関係を複雑にするものではなく、また、照応の関係は従前の土地全体と換地全体との間に認められれば足りると解すべきであり(最高裁判所昭和六三年一一月一七日第一小法廷判決、集民一五五号一三九頁参照)、前記認定の控訴人の従前地七筆と換地四筆の換地状況に照らせば、原位置ないしはその付近に全体を総合して均衡が保たれた換地がなされていると評価できるので、控訴人の右主張は採用できない。」

同二二枚目裏四行目の「証人周藤準」の次に「(原審及び当審)」を、同八、九行目の「法内四四番四」の前に「控訴人に換地した四四番二一の土地の南西に隣接し、拡幅後の県道三七号線に面する」を、それぞれ加える。

同二四枚目裏三行目の次に、改行して次のとおり加える。

「この点について、控訴人は、出宮の従前地の地目は田であって、同人が田から宅地の換地を受けていることを考慮すべきであり、主として宅地の従前地から宅地の換地を受けた控訴人と比較して著しく有利な処分を受けている旨主張するが、法八九条一項も、照応の要件としては、換地及び従前地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等を例示規定して土地の客観的要素を重視し、地目それ自体は右要件としておらず、撮影対象については争いがなく、弁論の全趣旨により昭和五六年九月に撮影された写真と認められる乙第二号証の一によれば、出宮の従前地の一六九番四の土地は、本件換地処分がなされた当時、すでに一部が駐車場として利用されるなど現況は田ではなかったことが認められ、加えて、原判決添付別紙処分目録一に記載のとおり、控訴人の従前地七筆の中には、地目が田、畑の土地が六筆もあること(当時者間に争いがない。)などに鑑みると、控訴人の右主張は失当という外ない。また、控訴人は、平等原則からして相互に関連する控訴人の従前地七筆と出宮の従前地一六九番四の土地とを比較すべきである旨主張するが、前記認定のとおり、出宮は右土地以外にも拡幅前の県道三七号線に面する多数の従前地を所有していたものであって、これらの土地全体との総合的な照応関係をみるべきであり、右主張は採用できない。次に、控訴人は、控訴人と出宮との換地を比較した場合、換地の位置、形状においても大きな較差がある旨主張するが、控訴人の従前地七筆はいずれも拡幅前の県道三七号線に面していなかったのに、換地後は四四番三及び同番二一の土地が拡幅後の県道三七号線に面し、その北東に接し一画となった同番一及び同番二〇の土地は幅六メートルの道路に二辺を囲まれた角地となって有効な土地利用が可能となっていること、一方、出宮は拡幅前の県道三七号線に面する多数の従前地を所有していたもので、一六九番四の土地も右県道に面していたことは、前記認定のとおりであって、右主張も採用することができない(控訴人は、被控訴人が出宮の従前地一六九番四の土地を角地と評価したことを非難するが、土地評価基準三条の趣旨から、その東側が河川であっても通風や採光等の関係で道路に準じて扱うという土地評価も可能であり(前掲乙第一一号証及び周藤証言)、仮に右角地評価が不適切としても、このことをもって、被控訴人が恣意的に土地評価をしたとまでは認めるに足りない。)。さらに、控訴人は、出宮との換地と比較して控訴人に対する換地が原位置換地を原則とする換地設計基準七条の規定、ひいては照応の原則に明らかに反している旨主張するが、控訴人への換地が原位置ないしはその付近の土地への換地と評価でき、一方、拡幅前の県道三七号線に面していた出宮の従前地一六九番四の土地を飛換地とするのは同人に著しく不利益を与えるもので相当でないことは、前記認定のとおりであって、右主張も採用できない。なお、控訴人は、出宮が本件土地区画整理の評価委員をしていたことから不公平な換地が行われた旨主張するが、控訴人に対する換地が出宮に対する換地に比し著しく不公平であるとはいえないことは前記認定のとおりであり、出宮は土地区画整理審議会の同意を得て選任された五名の評価員の一人にすぎないこと(乙一九号証)などに照らせば、右主張も失当という外ない。

同二四枚目裏六、七行目の「甲第一号証の一」を「甲第一、第二号証の各一、二」と改め、同二五枚目表一行目の「証人周藤準」の次に「(原審及び当審)」を加える。

同二六枚目表一行目の「証人河原清人」の次に「(原審及び当審)」を加える。

同二六枚目裏四行目の次に、改行して次のとおり加える。

「この点について、控訴人は、山地部の土地は土地の位置、形状による価格差が少ないから換地による減歩率は原則として同一でなければならないとして、平均減歩率と控訴人への換地の減歩率の較差を問題とするが、前掲乙第一一号証、原審及び当審証人周藤準の証言によれば、山地部の従前地の基準指数を算定するには、共通負担地積を控除した後、山地部修正が行われるため、同じ山地部であっても、各権利者の従前地の山林部と耕地部の所有割合によって基準指数に差が生じることが認められ、加えて、前記認定のとおり、控訴人の従前地のうち三筆は谷間の奥部分に存する細長い不正形な土地であったのが、新設した道路に面する宅地に換地されていることなどに照らせば、右減歩率の較差をもって違法とするには足りないというべきである。次に、控訴人は、従前地の基準地積の算定に誤りがある旨主張するが、前記認定のとおり、控訴人は被控訴人から昭和五〇年三月二七日付で右基準地積の通知を受けながら、異議申立期間内に更正手続に及んでおらず、被控訴人が右通知の際に用いた従前地の実測地積は広島市水道局が隣地の所有者の立会の下に測量したもので正確なものと認められるから、右主張は採用することができない。」

二  以上の次第で、控訴人の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について行政訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柴田和夫 裁判官 佐藤武彦 裁判官 岡原剛)

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